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京の算数学問題#1177

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算数学コラム
こんにちは!京都市中京区で算数・数学専門の「アイデア数理塾」を運営しております、油谷拓哉(ゆたに たくや)です。
学校や家庭でよく言われる「ごはんの前に手を洗いなさい」「外から帰ったらまず手洗い」。子どもたちも習慣的にやっていますが、実は「どうして石けんを使うのか?」という理由まで説明できる人は少ないのではないでしょうか。
「水で洗うだけじゃだめなの?」「なんで石けんだとばい菌が落ちるの?」
この疑問には、科学的な仕組みが隠れています。今回はその秘密をわかりやすく解説していきます。
水だけで洗うと何が足りないのか?
手には目に見えないほど多くの汚れがついています。
- 食事でついた油
- 外で遊んでいるときに触れた泥やほこり
- 人間の体から自然に出る汗や皮脂
このうち「油」や「皮脂」に、ばい菌やウイルスがくっついていることが多いのです。
しかし、水と油は性質が合わないため、混ざり合いません。コップの水に油を垂らすと油が浮きますよね。あれと同じで、水だけで洗っても油汚れやそこに付着しているばい菌はなかなか落ちないのです。
石けんの分子の不思議な形
ここで登場するのが「石けん」です。石けんの分子は少し変わった形をしています。
- 一方は「水」と仲良し(親水性)
- もう一方は「油」と仲良し(親油性)
まるで「二つの世界をつなぐ橋」のような存在です。
この性質のおかげで、石けんは水と油の両方をつなぐことができます。
石けんが汚れを落とす仕組み
- 石けんの“油と仲良し部分”が、手についている油や皮脂の汚れにくっつく。
- もう一方の“水と仲良し部分”が、水に引っ張られる。
- 汚れやそこに付着していたばい菌が、小さな粒(ミセル)に包み込まれ、水に混ざり合って流れ落ちる。
つまり、石けんは「ばい菌や汚れを水に乗せて運ぶお手伝い」をしているのです。
石けんはウイルスにも効果がある?
細菌だけでなく、ウイルスにも石けんは効果があります。
特に「エンベロープ」という脂質の膜を持つタイプのウイルス(インフルエンザウイルスや新型コロナウイルスなど)は、石けんで膜が壊されてしまい、感染力を失うのです。
だからこそ、感染症対策では「石けんでの手洗い」がとても大事だと強調されるのですね。
石けん vs アルコール消毒の違い
ここで気になるのが、「石けんで手洗い」と「アルコール消毒」の違いです。
- 石けん:油や汚れを水に溶け込ませて「流す」のが得意。
- アルコール:ウイルスの膜を壊したり、細菌を殺菌するのが得意。
つまり、手が泥や油で汚れているときは、アルコールだけでは十分ではありません。まず石けんで手を洗い、その後必要に応じてアルコール消毒をするとより効果的です。
実験してみよう!家庭でできる簡単理科あそび
実験① 油と石けん
- コップに水を入れる
- サラダ油を少し垂らす(油が浮く)
- 石けん水を加えて混ぜる
→ 油が細かく分かれ、にごったようになります。これが石けんが汚れを分解して落とす仕組みです。
実験② コショウでばい菌の動き?
- 皿に水を張る
- 表面にコショウを少し振る(ばい菌の代わり)
- 石けんをつけた指を水面に触れる
→ コショウが一気に端に逃げていきます。石けんが水の表面張力を変えることで、汚れやばい菌を押しのけているのが目に見えてわかります。
小学生に伝えたい「手洗いの意味」
「きちんと石けんで手を洗うこと」は、ただの習慣ではなく、自分や家族を守る大切な行動です。
- 食べる前に洗うのは、口にばい菌を入れないため
- 外から帰って洗うのは、外でついたばい菌を家に持ち込まないため
- トイレの後に洗うのは、他の人にうつさないため
意味を理解すると、ただの「やらされる習慣」から「自分を守る習慣」に変わります。
勉強と同じ「なぜ」を大切に
石けんの仕組みを学ぶと、「なぜ手洗いが大事なのか」がよくわかります。これは算数や理科の学びにも共通しています。
ただ暗記するだけではなく、「なぜそうなるのか」を理解すると、子どもたちの行動はグッと変わります。
まとめ
- 水だけでは油やばい菌は落ちにくい
- 石けんには「水と油をつなぐ性質」があり、汚れを包んで流す
- 一部のウイルスも石けんで無力化できる
- アルコール消毒と使い分けるとさらに効果的
- 子どもに「なぜ」を伝えると、習慣が続きやすい
次に手を洗うとき、「石けんってばい菌を流す魔法みたいなものなんだよ」とお子さんに伝えてみてください。手洗いがちょっと楽しくなるかもしれません。
以上、京都市中京区のアイデア数理塾 油谷拓哉(ゆたに たくや)でした!
京の算数学 解答#1177
