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京の算数学問題#1206

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算数学コラム
こんにちは。
京都市中京区のアイデア数理塾、油谷拓哉(ゆたに たくや)です。
中学数学を教えていてよく感じるのが、
「性質」と「定義」の区別があいまいなままになっている生徒が多いということ。
たとえば、
- 「平行四辺形の性質は?」
- 「平行四辺形の定義は?」
この2つの質問をすると、ほとんどの生徒が同じような答えを返します。
「向かい合う辺が平行で、長さが等しくて、対角が等しい…」
でも実は、それらの中には“定義”と“性質”が混ざっているんです。
今回は、「性質」と「定義」の違いを整理しながら、
どう理解すれば数学の思考力が伸びるのかを解説します。
① 「定義」とは? ― そのものを決めるルール
定義(definition)とは、
「その図形や概念を“何であるか”と決める条件」のことです。
たとえば、
- 平行四辺形の定義:
「2組の向かい合う辺がそれぞれ平行な四角形」 - 正三角形の定義:
「3つの辺の長さがすべて等しい三角形」 - 円の定義:
「1つの点(中心)からの距離が等しい点の集まり」
定義とは、「これを満たせば○○と呼びます」という“ルール”のようなもの。
つまり、定義を変えると、別のものになるという強い意味を持っています。
数学ではこの「定義」が最も根本。
そこからすべての「性質」や「定理」が生まれていきます。
② 「性質」とは? ― 定義から導かれる特徴
一方、性質(property)とは、
「定義をもとにして導かれる、その図形や数の特徴」のことです。
たとえば、平行四辺形の場合:
- 定義:2組の向かい合う辺がそれぞれ平行
- 性質:
1. 向かい合う辺の長さが等しい
2. 向かい合う角の大きさが等しい
3. 対角線の中点が一致する
これらは“定義の結果としてそうなる”ものであって、
「そう決めた」わけではありません。
つまり、
定義 → 理由づけの出発点
性質 → 定義をもとにして証明できる特徴
この違いがとても重要です。
③ 似ているけど違う ― 「定義」と「性質」の見分け方
見分け方のコツはシンプルです。
「そう決めたのか?」 or 「そうなるのか?」
これで判断できます。
例 | 定義 or 性質 | 理由 |
---|---|---|
正方形は4つの角がすべて直角 | 定義 | 「直角である」と決めている |
正方形の対角線は長さが等しい | 性質 | 定義から導かれる結果 |
円の半径はすべて等しい | 定義 | そもそも「等しい点の集まり」として定義されている |
平行四辺形の対角は等しい | 性質 | 平行の定義から導かれる |
この視点で考えると、
問題文の中で「定義を聞かれているのか」「性質を聞かれているのか」が
はっきりわかるようになります。
④ 性質を「覚える」だけでは成績が伸びない理由
多くの中学生が、「性質」を暗記で覚えようとします。
しかし、それだと応用問題や証明問題で必ずつまずきます。
なぜなら、
性質は「結果」だから。
「なぜそうなるのか」を理解していないと、使いこなせないのです。
たとえば、
「平行四辺形の対辺は等しい」ことを覚えていても、
「なぜ?」と聞かれて説明できない生徒が多い。
これは、定義と性質のつながりを理解していない状態です。
逆に、
「2組の向かい合う辺が平行なら、向かい合う辺は等しくなる」
という“理由の流れ”を理解している子は、
他の図形(長方形・ひし形など)にも応用できます。
つまり、
定義から性質を導く流れを意識できると、数学の本質的な力が育つのです。
⑤ 「定義」を理解する勉強法
性質を覚える前に、まず「定義」をしっかり理解しましょう。
おすすめの学習法は3つです。
1. 自分の言葉で言いかえる
教科書のまま暗記するのではなく、
自分の言葉で説明してみると理解が深まります。
例:
「平行四辺形って何?」
→「2組の辺が平行な四角形。つまり、上と下、左と右がそれぞれ同じ方向を向いてる四角形。」
2. 図を書いて確かめる
定義に合う図形と、合わない図形を自分で描き分けることで、
定義の本質が見えてきます。
「この図は2組平行じゃないから平行四辺形じゃないな」と考えるだけで、
定義を使った思考になります。
3. 性質を「説明できる」ようにする
定義から性質を自分の言葉で説明できるようになると、
証明問題や応用問題が自然と解けるようになります。
⑥ アイデア数理塾の考え方
アイデア数理塾では、
「定義 → 性質 → 応用」の順で学ぶことを大切にしています。
たとえば「図形」単元では、
- まず定義を自分の言葉で説明できるようにする
- 次に、定義を使って性質を“自分で発見”する
- そして、性質を使って問題を解く
という流れを一人ひとりの理解度に合わせて進めています。
この過程で「なぜそうなるのか」を筋道立てて考える力が身につき、
結果的に証明問題や文章題にも強くなります。
まとめ:定義を理解すれば、数学は“つながる”
「性質」は「定義」の上に成り立ちます。
定義を知らないまま性質を覚えるのは、
土台のない家を建てるようなものです。
- 定義:出発点(何であるかを決める)
- 性質:結果(そこから導かれる特徴)
この順序を意識して学ぶだけで、
数学の理解は一気に深まり、応用力がつきます。
中学数学は“暗記”ではなく“理解”の教科。
「定義から考える」姿勢こそが、
本当に強い数学力を育てる鍵なのです。
京の算数学 解答#1206
